【PP】プッシュ−プル式 VS 【TR】 トリガー式
いままでエアブラシといえばプッシュ-プル式と相場は決まっていた。その証拠に今現在でも市販されているエアーブラシのラインナップは圧倒的にこのタイプが多い。トリガー式はメーカーより発売されてはいるがまだ少数派である。
2004年7月にアネストイワタよりレボリューションシリーズHP-TR1/TR2が発売され、いよいよエアブラシが大ブレークの兆し。そこで今回TR-1の実力を検証してみると驚くべき事実が判明した。まさにTRはその名のとおりエアブラシにレボリューション(革命)をもたらすものといっても過言ではない。 ではその機能とは果たしてどのようなことかレポートしてみることにする。
まず、プロに意見を聞いてみた。
エアラーティストYUKI氏
自分がエアブラシを始めた頃は選択の余地はなかった。プッシュ-プル式のみ。ずっとこれで描いていた。アネストイワタよりトリガータイプのTRシリーズが発売され、初めて使ってみた。こんなに描きやすいエアブラシがあるのかと驚いた。「大きい声では言えない私の内緒話ですが、トリガーを使うようになってからぼくはうまくなったんですよ。」
というように白波瀬氏は現在トリガー派である。それではTR-1のどこがいいのか?
もう少し突っ込んで聞いてみた。「微妙な表現はやりやすい。特に極細の線はトリガーに限る。」という意見
エアブラシという言葉を聞くようになって30年あまり・・・。その間エアブラシはまるで白亜紀の恐竜のように進化の歩みを止めていた。いったいなぜ?
エアブラシはスプレーガンの1種であることはみなさんもご存知だと思いますが、スプレーガンは仕事の道具であり、エアブラシは言わば遊び道具でしかない。それは戦後の高度経済成長のなか、企業は物の生産に追われ、社会は「遊び」という余裕を置き忘れていたせいかもしれない。
現在日本でスプレーガンのトップメーカーであるアネストイワタがまだ岩田塗装機といった時代、エアブラシのルーツは「線引きピース」という仕事の道具である。1980年台になってようやくエアブラシが市民権を得て、スプレーガンのパンフレットの片隅に登場するようになる。だが、進化の歩みを止めた理由はそれだけではなかった。結論から先に言うと次のようなことです。「むずかしい道具を使いこなしてこそ真の・・・」という人間のプライドがそうさせたのです。
■エアブラシ・エルゴノミクス(人間工学)
プッシュ−プル式 (略称)PP
トリガー式 (略称)TR
以後それぞれ【PP】 【TR】と呼びます。
A点(力点) ・・・ボタンまたはトリガーを引く位置(指の当たる位置)
B点(作用点)・・・ニードルセンター
C点(支点) ・・・ボタンまたはトリガーの支点
ということをまず確認しておきます。
A⇔C(支点から力点までの距離)とB⇔C(支点から作用点までの距離)を計測した。PPはボタンを下に押してからうしろに引くためA点は最初の位置より下に来る。次にボタンまたはトリガーの支点からニードルの当たる位置までの距離を計測した。
これからニードルを1mm後退させるためにはPPはボタン、TRはトリガーをどれだけ引けばよいかを計算した。
【ボタン、トリガーのストローク幅】
PP・・・2.8mm
TR・・・6.0mm
これはいったいなにを表していると思いますか?
どちらのタイプもニードル(針)が後退することによって液体が噴出される構造であることは同じである。エアブラシは液体を吹き付ける量の操作が出来栄えに大きな影響を及ぼす。今はニードルの後退する距離を1mmと想定したが、極細線の場合はさらにこの1/5程度までの精度が要求される。その場合、ボタン、トリガーのストロークも1/5となるのでそれぞれPPなら0.56mm、TRは1.2mmとなり、TRならまだしもPPの場合はよほど器用な人でない限り相当の修練が必要になります。
TRはPPに比べより大きなトリガーアクションで繊細な表現までできるというアドバンテージがあります。言い換えれば、TRの出現でエアブラシはより易しくなった。
【TRの秘密 その2】
今述べましたがPP、TRを問わずボタン、トリガーの操作が出来栄えの成否を分ける。キャンバスにフリーハンドで描くときボタン、トリガーの「引き、戻し」で液体の噴出量を調節しながら、キャンバスとの距離を測り、同時にスピードを考えながらエアブラシを縦、横、斜に動かし、これを一連の動作で行うという、ひじょうに複雑な動きをします。
ボタンの操作だけをとらえてみてもPP型はボタンを「下に押し下げて、後ろに引く」という2次元の動きが必要になります。ボタンを下に押し下げるときにどうしてもターゲットが上下にブレやすくなります。
さらに難しいのは引くときよりも戻すときのほうが難易度は高くなります。引いたボタンを戻すとき下に押し付けたまま戻さなければなりません。その理由はノズルに液体が溜まるため、1ストロークは空気を出して終えなければならないからです。ボタンを上に解き放ってしまえばノズルに液が溜まり、その次のストロークに移った場合はそのまま噴出されることになり、ストロークの始めに玉が出来てしまいます。この動作はかなり指先に力が入りますのでスムーズな動作が難しい。
一方TR型はトリガーを引く、戻すという一連の動作(1D)でそのことが自動的に行われます。PP型に比べブレが少ないということは想像していただけれるでしょう。複雑な3次元の動作を同時に行うフリーハンドエアブラッシングですから、トリガーの操作だけでもシンプルであるほうがよいのは明らかです。
人間の探究心は素晴しいものです。いくらむずかしい技術でも根気強く反復練習を繰り返して、技を極めようとする力には敬服します。けれどもそうなるには長い年月が必要となります。やっとの思いでそこまでたどり着いたら、道具の技術革新によって簡単にできるようになっていたという悲劇もしばしば起きるものです。「むずかしい道具を使いこなしてこそ真の・・・」というこだわりは早く捨て去ることです。今こそ観念を打ち破るとき。エアラーティストたちよ立ち上がれ ! それより君たちの眠っていた才能を呼び覚まし、感性に満ち溢れた作品を世に送り出すことこそ先決だ・・・と思うのですがいかがなものでしょうか。
【後記】
■スポーツ道具・ミニ進化論
私の趣味の話で恐縮ですが、1975年頃の話でしょうか、テニスの世界では当時、木製のラケットが主流でした。当時もいろいろなラケットメーカーがありましたが、なんせ素材が「木」ですから製造工程や構造やらを変えても、こう言っちゃなんですがデザインや色が変わる程度でどこのメーカーも性能的にはほとんど同じようなラケットばかりでした。できることと言えば重さ、重心バランス、グリップサイズを少しだけかえることができる程度で、素材はもちろんですがラケット面サイズを大きくするなどという発想しなかったか、あるいはできなかったのどちらかでしょう。今では当時の木製ラケット面のサイズを語る人はいませんが、推測するに70平方インチくらいだったでしょう。(ちなみに今の競技用の主流は98くらい)
ところがあるときハワイのおみあげにと、1本のラケットをもらったんですが、これをみてアッと驚きました。素材はスチール製でラケット面がやたら「デカイ!」打ってみた感触は「めちゃくちゃ飛ぶ」ラケットでした。これはなんだ?「テニスの神を冒涜するものだ」などとは思いませんでしたが、「ひょっとしてテニスの競技自体が変わるのかな?」という予感がありました。しばらくしてテレビでグランドスラム大会の映像を見ていると、女子でパム・シュライバーという選手がその「デカラケ」を使ってサービス&ボレーでネットダッシュを繰り返し、活躍する姿を見た記憶があります。とうぜんですが他の選手はあたりまえのように従来のラケットを使っておりましたが、彼女のスピードとパワーの前に「なすすべなし」状態でありました。
これがきっかけでテニスラケットの技術革新が始まり、一般のプレイヤーにもデカラケが浸透して行きました。そして現在のラケットに進化を遂げて行きます。私も少しだけ年をとり過ぎましたが、タイムマシンに乗って現在のラケットをこっそり忍ばせてその時代に戻ったなら、ひょっとして世界に羽ばたいていたなんて・・・??ラケットの技術革新によってそれくらい当時とはスピードに違いがあります。
今までの固定概念を打ち破るとき、まさしくレボリューション(革命)が起きるのです。エアブラシという道具でいうと、アネスト岩田のTRシリーズは、革新的なツールであるとも言えます。
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