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【塗装ブース進化論】
塗装ブースは文字通り塗装する室のことです。その目的は、できるだけホコリを付けずに塗装することができて、その場で乾燥できることです。
でも、塗装ブースの本来の目的は、塗装作業者の作業環境を守るということです。塗装室では塗装をするわけですから、作業者にとっては、その塗装ミストと有機溶剤の処理が問題となります。それらを屋外に排出しなけば、塗装することは困難を極めます。それは締め切った、換気のない部屋で塗装することを想像すれば、理解していただけると思います。
ブース内の空気を換気するために、排気ファンが付いています。塗装室外へ空気を出すためには、どこか空気が入ってくるところがなければなりません。では空気の流入口を設けました。けれども、それでは問題があります。空気と同時にホコリも室内に入ってきてしまい、塗装物にホコリが付着してしまい、塗装の仕上がりが悪い。対策として空気の流入口にフィルターを取り付けることにしました。これで、ホコリをろ過して空気を室内に入れられるようになりました。ここに付いているフィルターが給気フィルターです。
では、排気はどうか?スプレーミストをそのまま室外に出してしまうと、近隣の迷惑になります。そこでここにもフィルターを取り付けてろ過することにしました。これが排気フィルターです。塗装ブースの原型はざっとこのようなもので、この構造をもったブースが自然給気式と呼ばれるもので、現在でも簡易型のビニールブースなどは、この構造になっています。
さらに、自然給気式からブースは進化して、現在は圧送式(誰が名付けたかプッシュプル式)が主流になりました。今までの自然給気式では、少し不具合が出てきました。それは、排気ファンだけでは塗装ミストをじゅうぶんに室外に排出することが難しいし、どうしてもホコリが中に入って来やすい。ということで、空気の流入口にもファンを取り付けて、室内に空気を送り込んでやればいいのではないか。こうすれば、ブース内の換気がとてもスムーズになりました。
こうして取付けられたファンが給気ファンです。これが圧送式の原型です。別名プッシュプル式と呼ぶのは、空気を押し入れて、引いてやるという意味です。(圧送式は2つのファンが付いてます。)
さらに、ブースは進化して、ブース内で乾燥できるようにしよう、ということで給気ファンの手前にバーナーを取り付けて、暖かい(熱い)空気を送り込んでやろうというわけです。このことによってブース内で乾燥できるようになり、塗装車がブースを出るときには仕上がって出せるようになりました。よく受ける質問にどうして自然給気式ブースに乾燥装置がないの?と聞かれますが、自然給気式ブースには熱風を送るファンがないわけですから、当然といえば当然です。
【ブースの基本構造】
■給気室、排気室
日本製と外国製のブースを比べて異なる点は、排気ピットに対する考え方の違いがあります。日本のブースメーカーの場合、コンクリートでピットを造り、その上にブースを建てるという考え方ですが、外国製のブースの場合そのほとんどは、床上げ式という考え方でつくられています。床上げ式というのは床面より下に約30cmくらいの空洞を設けて排気室をユニットとして組み込んでいるものです。
ということは、フラットなコンクリートの床さえあればそのままブースが建てられる、というメリットがあります。
しかし、この場合30cmの段差があるため、乗り上げスロープが必要となります。これをツライチにするには、あらかじめ30cm分だけ、ブースの塗装室と給排気ユニットの範囲をコンクリートをカットして掘り、ブースを設置した後、その隙間にコンリートを充填し、左官仕上げすれば、フラットにすることができます。
日本製ブースのピットの深さは1mくらいで、ブースの中央に造ります。ピット部分にはグレーチングをはめ込み、まわりはコンクリートでさらにユニットに通じるトンネルをつくります。(業界用語でトンネルのことをスラブといいます。)
両者とも床面にグレーチング(メッシュ状の鉄板)をはめ込むことは同じですが、外国製ブースの場合は、床面全体がグレーチングになっている場合がほとんどで、グレーチングの下にグラスウール繊維の排気フィルターをはめ込みます。(日本製はここにフィルターは付けない。排気ユニット内に排気フィルターが内蔵されている場合がほとんどです。)
この違いによって、塗装作業上何が変わってくるかというと、ブース内で水を使えるかどうかです。余談ですが一昔前、ピット内に水を流す方式の、いわゆる水洗ブースが流行した時期がありましたが、いまはほとんど見かけません。ピット内に水を貯めればブース内の湿度が高くなり、ブース本体がが腐食する原因となるためこの方式は用いられなくなりました。
外国製ブースの場合、水を使えば床下の排気室の骨組は鉄製のため、腐食します。また、フィルターが水を含むと通過減圧が大きくなるので、空気の通りが悪くなります。取説ではできるだけ水は使わないようにしましょう、と言っています。ホコリを少しでも減らしたいというのは作業者の人情で、ブース床に打ち水をしたいものです。
また、塗装後、次の塗装までにブース内を清掃するとき、水道できれいに流したいと思うのは作業者の心理でしょう。コンクリートピットならば、それをしても差し支えはありません。ただし、ピット内がプールになるようなことはしないようにしましょう。これは前出の湿気の理由からです。コンリートピットの場合、片側に勾配をとり、低い側に50cm角程度の集水舛を設けて、そこに水が溜まるようします。舛に溜まった水は水中ポンプで吸い上げて、外に出せるようにします。
また、輸入ブースがみな同じような形式にしているのはなぜかと考えましたが、これは販売の都合上の理由からでしょう。「そのまま設置できる」からではないでしょうか。輸入品はできるだけ手を加えずそのまま販売できればコストがかからずに済みます。日本のメーカーなら、その工場のレイアウトに合わせて変更も可能でしょうが、輸入品は商社が扱っている場合がほとんどなので、基本的には輸入ブースは改造できないものと考えたほうがよさそうです。また、作業者にとってグレーチングの上で長時間作業するとけっこう疲れるので、できれば必要なグレーチング以外の範囲は、コンクリートのほうがよさそうです。
【内圧制御】
「ブース進化論」で述べましたが、プッシュプル式のブースの場合、給気ファンと排気ファンが付いています。この2つのファンの風量バランスをとらなければなりません。ファン自体の馬力が同じであることは当然ですが、どちらか一方が強ければ不具合が生じます。「給気ファン>排気ファン」の場合は、ブース内の圧力はプラス圧が強くなります。おおげさに言えばブースが膨れるわけです。この場合はミストが室内にコモリやすくなります。
また、給気「ファン<排気ファン」なら内圧はマイナスとなり、ブースがちぢむわけです。理論的には後者の場合のほうがホコリが付きやすくなります。理由は室内は密閉されてはいますが、予定されている給気口以外からも、例えば前出入り口やパネルの隙間などから、空気やホコリが進入しやすくなります。自然給気ブースがプッシュプル式に比べてホコリが付きやすいのはこのためです。
また、ブースの使用時間を重ねていくと、徐々にフィルターの目が詰まってきます。特に排気フィルターは塗装ミストが付着していくので、給気フィルターに比べ、早い速度で目が詰まってきます。はじめは給気と排気のバランスがとれていたとしても、ブース室内圧は徐々に変化してきます。内圧が変化したときに、なんらかの方法でバランスを保たなければなりません。
通常圧送式のブースは排気ファン側のある箇所にダンパーと呼ばれる弁が付いていて、この弁の開け閉めによって内圧を調整する構造になっています。これはメーカーによって単純に手動で開け閉めを行うものとエアー駆動ダンパーのスイッチで開け閉めするものなどがあります。また、日本のあるメーカーの最先端のブースはこれをコンピューター制御により自動で調整する機構を持つものがあります。日本の技術は世界の最先端といわれるゆえんです。
【ファンの種類について】
塗装ブースに使われるファンの種類はつぎのとおりです。
- シロッコファン
本格的な圧送式塗装ブースの給気、排気ファンに使われるファンで風量が最も多いのが特徴です。自動車用ブースではやや小さい容積のブースには給・排気ファンとも5.5kw=7.5馬力が用いられますが、容積が大きくなると日本の労働安全基準値に届かない場合があります。少し大きめのブース(目安で幅4.3m×長さ7m×高さ2.6m程度)であれば給・排気ファンとも7.5kw=10馬力が必要になります。推奨するわけにはいきませんが、労働安全基準値には満たなくとも、塗装するのに支障がでるとは限りません。ただし官公庁に届けるにはこの基準値を満たす必要があります。基準値についてはさらに具体的に後述しますので参考にしてください。
- 軸流ファン
モーターの回転をベルトでつないでファンを回す方式です。空調設備や局所排気装置の中型までや低価格のオープンブースに排気ファンに用いられます。同じ馬力でも風量はシロッコファンより劣ります。
- 有圧換気扇
よく家庭用のキッチンに付いているファンで、1度は見られたことがあると思います。
上記の2つのファンよりは風量は少なく馬力もそんなに大きなものはありません。ビニールブースの排気ファンや低価格のオープンブースの給気ファンなどに用いられます。
【照明について】
ブース室内の明るさはとても重要なことです。ブース照明の総消費電力(W)はカタログで確認してください。さらに蛍光灯の方向についても意外に重要です。ブースによっては蛍光灯が縦に配列されているブースもあります。パネルの関係で縦方向のほうが企画しやすいので、比較的グレード低位のブースはこの方法をとっています。ブース内で塗装者は蛍光灯を背にして作業しますので、蛍光灯が縦配列ならば、作業者が照明を遮ることになります。
やはり横配列のほうが影ができにくいので、合理的です。
また、蛍光灯の取付位置で比較的多いのが、ブースの角に斜めに取り付けられたブースがあります。照明照射方向は斜め下を照らすので、良い方法ではありますが、空気の流れという理由からは、流れが留まる部分ができると言われています。天井の給気口は全面にフィルターが取り付けられたブースのほうが、機能性は優れています。
この場合はブース側壁に照明が付いています。
【日本製対外国製】
外国製塗装ブースを設置されているあるユーザーでバーナーが故障してしまいました。販売元に連絡して対策を考えましたがラチがあきません。調べていくとバーナーも外国のメーカーであることがわかりました。元々ヨーロッパではバーナーに使う燃料は軽油を使っています。日本では燃料は灯油を使用しています。
よく内容をわかっているブースメーカーは、バーナーは灯油の仕様に変更されています。仕様変更されていない場合、その違いによりどういう不具合が生じるのか定かではありませんが、日本製のブースには、通常日本製のバーナーが取り付けられており、灯油で使用するように作られております。
電気系に関しても同じようなことがいえます。日本と諸外国では燃料や電気事情が違うので、そのまま日本に持ってくるだけでは、うまくいくかどうかはわかりません。
【暖気運転について】
外気温が低いときに塗装する場合、塗料が乾燥しにくくなり、1度に厚く塗れば塗るほどタレやすくなります。そのようなときブース内の温度を上げて20℃程度で塗装できれば快適に塗装することができます。熱風圧送式のブースなら塗装時にも20℃に温度設定すれば、バーナーで暖かい空気を送り込みながら塗装することが可能です。冬にはとても便利な機能です。
【ブースの労働基準について】
さきほど塗装ブースの目的の1つに作業者の塗装環境を守ることをあげましたが、それには風速、風量に労働基準があります。その基準値は風速毎秒0.2mです。
風量の算出式はつぎのとおりです。
給気風量(立方メートル/分)=風速(m/秒)×60(秒)×ブース床面積(平方メートル)
これをクリアする風量は
(例)ブースの室内寸法が4m×7mの場合
336立方メートル/min.=60秒×4m×7m×0.2m/sということになります。
日本のブースメーカーはこの基準をクリアするように、ブースに使用するファンの種類、馬力等を選定しておりますが、ヨーロッパや諸外国にはこういった基準というものがなく、各ブースメーカーが独自に決定しているのが実情です。
▲塗装工場に関する法令一覧.pdf
【塗装設備とVOC(揮発性有機化合物)について】 ▲詳しくはコチラのページへどうぞ
塗装工場のなかで特にVOC排出量に関係の深い、塗装ブースの排気ダクトから排出されるVOC量の算出方法について、事例を挙げて、説明していますのでごらんください。
【風の流れ 上下圧送式、セミダウン、サイドダウン】
通常、圧送式ブースの風の流れは天井より床に抜ける場合がほとんどですが、このような風の流れのブースを上下圧送式と呼びます。
それに対しセミダウン方式と呼ばれるブースは圧送式は同じですが、給気口は天井の前方に付いていて、排気口(排気ファン)がブース後方についているものです。したがって風の流れは上から入ってきて、後ろに抜けていきます。
また、少し特殊なものですが、ブースの両側壁に排気口があるものをサイドダウンと呼びます。大きい分類ではこれもセミダウン方式に属します。セミダウン式は、いわゆるオープンブースがこの方式のものが多い。
セミダウンのメリットは、ピット工事が不要でパネルブースでも比較的コストが安くつきます。デメリットは横方向の風の流れにより、上下式に比べホコリを引きずるとされていますが、実際には思ったよりホコリは少ないようです。
【ブースの材質による分類】・・・パネルブース、オープンブース、ビニールブース
パネルブースとはブースに使用される材質による分類で、ビニールに対比してハードな材質でつくられたブースのことをパネルブースと呼びます。最近ではほとんどのメーカーは熱効率と外観を考え断熱パネルを使用しています。
これに対し、最近流行の軽補修にオープンブースやビニールブースを導入されるケースをよくみかけます。
見栄えも密閉性もパネルブースのほうがよいのですが、オープンブースにも良いところがあります。まず、コストが安いこと。もうひとつ、オープンブースは、工場の天井より吊り下げることにより前側には柱がありません。カーテンを開ければ前も横もフルオープンになります。車の出し入れもラクです。パネル型のブースであれば、スペースが固定するわけです。オープンブースならカーテンを開ければ自由にスペースを活用することができます。
オープンブースとビニールブースの区別は、通常オープンブースはセミダウンの圧送式に対して、ビニールブースは自然給気式になっています。ビニールブースも天吊り式がありますので、使い勝手はアコーデオン式より天吊り式のほうがなにかと良いと思います。価格は天吊り式のほうが少し高めです。でも価格差以上にメリットはあります。
塗装作業者が複数名おられる工場では、1機は熱風圧送式のパネルブースで、もう1機はオープンブースのセミダウンを導入されるケースが増えています。どのように使い分けるかというと、ここ一番という仕事や塗装面積の広い仕事は圧送式パネルブースを使用し、クイックや比較的小面積の塗装はオープンブースを使用するという使い方です。塗装が小面積化しており、オープンブースの利用価値は高いようです。
【デザインについて】
日本に輸入されている外国製ブースはイタリア、フランス、スペイン、台湾、中国などです。意外にもドイツやイギリス、アメリカ製のブースは見当たりません。中でもとくに多いのがイタリア製です。イタリア製のブースを挙げてみるとSAICO(サイコ)、SAIMA(サイマ)、BLOWTHERM(ブローサム)、METRON(メトロン)、NOVA-VERTA(ノバ・ベルタ)・・・他にもありますがよく聞くメーカーだけでもこれだけあります。イタリアはもともと鉄工業に強みのある国であるという経緯からブース製造メーカーが多いのだと思います。
さて、イタリア製のセールポイントは何といってもデザインでしょう。車でいえばフェラーリに代表される色や形などデザインに関してイタリア製はすぐれています。ブースを選ぶ上でもデザインは重要な要素であることはまちがいありません。ボディーショップを訪れたお客さまにアピールできるデザインであることです。一方このデザイン性において日本の車がレクサスの登場で世界に躍進したように、日本のブースメーカーも研究を重ね、塗装ブースも一時の無骨な機能一辺倒の時代から、デザイン性の高いブースがつくられるようになりました。
【メンテナンスについて】
メンテナンスとは何なのでしょう。ズバリ故障時の対応の素早さでしょう。これ以外考えられません。ブースは大型の機械で長年使用するものです。その間に故障が発生することもじゅうぶん頭に入れておかなければなりません。もし、故障したら工場がストップしてしまい、その期間が長ければ大きな損失となります。一刻も早く修理しなければなりません。部品がすぐ間に合わないとか、すぐに修理にいけないというような対応のメーカーは最初から選ぶべきではありません。
【水性塗料対応ブース】
昨今、VOC規制から水性塗料が使われるようになってまいりました。水性塗料に対応するブースが発売されています。水性塗料を使うにあたっての問題点は、溶剤に比べて乾燥が遅いといわれています。その原因は湿度に大いに関係があります。
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