塗料と温度、湿度の関係 
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 ISO9001に取り組まれているボディーショップより、依頼がありまして、塗料と塗装条件(特にブースのセッティング)の関係を図表で表して説明しなさい。という課題をいただきまして、調べました。

 まず、塗料メーカーと塗装設備(ブースメーカー)に尋ねましたが、どちらも「そのような資料はない」という答え。メーカーは各々の分野では詳しいデータを持ってはいるものの、自らのテリトリーから、はみ出た情報については、守備範囲外ということか。

 2つの要素が組み合わさって、初めて「塗装」という完成品ができる。しかし、2つの要素がどうしてもリンクしない「未知の部分」がある。玄人本舗ではそれを「自分の使命」として、世間にお伝えしていこう思います。

 さて、本題に入ります。

 【調べた内容】
■各塗料と温度と湿度についての因果関係。温度と湿度が塗料の乾燥にどう影響し、作業性と仕上がりにどう影響を及ぼすか。
■塗料の種類:ハイソリッド溶剤型ベースコート、ハイソリッドトップコートクリヤー、水性ベースコートの3種類。
■空調機能付塗装ブースを生かす方法

 
■溶剤型ベースコート 
 
湿度/温度 -15℃ -10℃ -5℃ 0℃ 5℃ 10℃ 15℃ 20℃ 25℃ 30℃ 35℃ 40℃ 50℃
0% - - - - - - - - - - - - -
10% × × × × B B B B B × ×
20% × × × × B A A A A × ×
30% × × × × B AA AA AA A × ×
40% × × × × B AA AA AA A × ×
50% × × × × B AA AA AA A × ×
60% × × × × B A A A A × ×
70% × × × × B B B B B × ×
80% × × × × B B B B B × ×
90% × × × × B B B B B × ×
100% - - - - - - - - - - - - -
 
  溶剤ベースコートの塗装に最適な条件の範囲
  溶剤ベースコートの塗装が可能な条件の範囲
△ : 溶剤ベースコートの塗装には少し厳しい条件
× : 溶剤ベースコートの塗装が難しい条件

○メタルの配列
ベースコート塗料はスプレーすると、自動的にメタルがきれいに配列する機能をもっています。したがって、乾燥が速すぎると、メタルが整列するまでに乾いてしまい、メタルムラの原因になります。

○シンナーの選択
  溶剤型塗料は、希釈する溶剤(リデューサー)を気温により選択して、乾燥するスピードを調整しシンナーを使い分けます。
塗装に最適な範囲は、気温15℃〜25℃(標準)で、それより外のレンジ(薄緑の範囲B)は、シンナーの種類を使い分け調整します。

○さらに外のエリア(△や×)では、溶剤型塗料を塗装するには厳しい条件になります。(シンナーでの調整範囲を超えている)

○エアコン機能でグリーンゾーンまで室内温度を調整
・気温が低い場合(10℃以下)は、暖気運転(塗装モード)しながら、塗装ブース内の環境温度を少し上げて、グリーンゾーンまでもってきて塗装する。
・気温が高い場合(30℃以上)は冷媒機能を使い、室内温度を下げる。夏場、外気温が30℃程度であっても、立地条件によりブース内の温度は40℃かそれ以上におよぶことがよくあります。室内温度を把握して作業にかかることが重要。気温の高い場合に起こりうるトラブルは、塗装作業が長時間におよぶ場合、作業者の汗が、塗装面に落ちることがあります。
 

 

 
■溶剤型トップコートクリヤー
 
湿度/温度 -15℃ -10℃ -5℃ 0℃ 5℃ 10℃ 15℃ 20℃ 25℃ 30℃ 35℃ 40℃ 50℃
0% - - - - - - - - - - - - -
10% × × × × B B B B B × ×
20% × × × × B A A A B × ×
30% × × × × B A AA AA B × ×
40% × × × × B A AA AA B × ×
50% × × × × B A AA AA B × ×
60% × × × × B A A A B × ×
70% × × × × B A A A B × ×
80% × × × × B B B B B × ×
90% × × × × B B B B B × ×
100% - - - - - - - - - - - - -
 
  溶剤トップコートの塗装に最適な条件の範囲
  溶剤トップコートの塗装が可能な条件の範囲
△ : 溶剤トップコートの塗装には少し厳しい条件
× : 溶剤トップコートの塗装が難しい条件

○仕上げ塗装では、ツヤを出して塗ることが条件になります。

○シンナーの選択
  溶剤型塗料は、希釈する溶剤(リデューサー)とハードナーを気温により選択して、乾燥するスピードを調整して使います。
塗装に最適な範囲は、気温15℃〜25℃(標準)で、それより外のレンジ(薄緑の範囲B)は、シンナーの種類で調整します。

○さらに外のエリア(△や×)では、溶剤型塗料を塗装するには厳しい条件になります。(シンナー、ハードナーでの調整範囲を超えている)

○エアコン機能でグリーンゾーンまで室内温度を調整
まず、室内温度を把握して作業にかかることが重要。
・気温が低い場合(10℃以下)は、塗料を塗りこんだ場合、タレやすくなります。暖気運転(塗装モード)しながら、塗装ブース内の環境温度を少し上げて、グリーンゾーンまでもってきて塗装する。
・気温が高い場合(30℃以上)は乾燥が速くなるため、塗料が伸びない。(平滑なツヤを出しにくい)さらに、無理をして膜厚を付けた場合、ピンホール(ワキ)の原因にもなります。冷媒機能を使い、室内温度を下げる。夏場、外気温が30℃程度であっても、立地条件によりブース内の温度は40℃かそれ以上におよぶことがあります。気温の高い場合に起こりうるトラブルは、塗装作業が長時間におよぶ場合、作業者の汗が、塗装面に落ちることがあります。

○溶剤型塗料と湿度との関係
溶剤型塗料は水性塗料ほど、乾燥に湿度が影響しないと言われていますが、影響がないわけではありません。最適レンジに近いほど、塗装はしやすい条件になります。(湿度は20%〜70%。濃いグリーンゾーン)

 

 
■水性ベースコート 
 
湿度/温度 -15℃ -10℃ -5℃ 0℃ 5℃ 10℃ 15℃ 20℃ 25℃ 30℃ 35℃ 40℃ 50℃
0% - - - - - - - - - - - - -
10% × × × × × × ×
20% × × × × × B B B B B × ×
30% × × × × B AA AA AA A B B B
40% × × × × B AA AA AA AA B B B
50% × × × × B AA AA AA A B B B
60% × × × × B A A A B × ×
70% × × × × × B B B B × ×
80% × × × × × × ×
90% × × × × × × × × × × × × ×
100% - - - - - - - - - - - - -
 
  水性ベースコートの塗装に最適な条件の範囲
  水性ベースコートの塗装が可能な条件の範囲
△ : 水性ベースコートの塗装には少し厳しい条件
× : 水性ベースコートの塗装が難しい条件

○水性塗料と温度の関係
水性塗料は0℃以下の条件で保存していると、使えなくなります。これは水がベースであるため「凍る」からです。いったん凍った塗料を解凍しても、元の性状には戻りません。また、使用においても0℃以上が条件になります。

○水性ベースコートの乾燥は、湿度が大きく影響します。湿度が高い場合は乾燥が遅くなり、次の工程までの待ち時間が長くなります。低い場合は速くなり、ベースがカサつくため、キレイなメタルのならびが得られません。水性塗料の希釈剤は水(+アルコール系溶剤)で、乾燥スピードが一定のため、調整することができません。したがって湿度を調整することがポイントになります。

○塗装に最適な範囲は、湿度30%〜50%で、それより外のレンジ(薄緑の範囲)に行くにしたがって、使い難くなります。特に湿度80%以上では、乾燥が極端に遅くなります。

○さらに外のエリア(△や×)では、水性ベースコートを塗装するには厳しい条件になります。

○空調機能でグリーンゾーンまで室内の湿度を調整
・湿度が低い場合(30%以下)は、加湿運転(塗装モード)しながら、塗装ブース内の環境湿度を少し上げて、グリーンゾーンまでもってきて塗装する。
・湿度が高い場合(60%以上)は除湿機能を使い、湿度を下げて、グリーンゾーンまで持ってきて塗装する。

 

 

【ひと口知識】
■エアコン ドライ(除湿)モードの原理
 空気が含むことのできる水蒸気の最大量(飽和水蒸気)は、温度によって変わり、温度が高いほどたくさんの水蒸気を含むことができる。逆に温度が下がるほど、含むことのできる水蒸気の量が少なくなるという性質を持っている。
  エアコンのドライモードは、この原理を利用しています。
 まず、吸い込んだ空気を冷やし、水蒸気を強制的に水に変えて屋外に捨てる。
その後で、空気をヒーターで再び「暖めて」室内に戻すのです。これを「再熱方式」と呼びます。
湿度は冷房時よりも20〜30%低くなり、冷気が吹き出して室温が下がることはありませんが、空気を暖める分だけ消費電力が多くなる。したがって、再熱方式のドライモードは除湿効果が大きいが、消費電力量は冷房時よりも約20%多くなる。

  一方、冷房では、そもそも乾燥したいのではなく、空気をただ冷やしたいだけなのですが、水蒸気の性質により、どうしても空気中の水分が減らざるをえないのです。

冷房  → 空気を冷やすため、余計な副次効果として乾燥する。(湿度が下がる)
ドライ → 乾燥という目的のため空気を冷やすので、やむをえず暖め直す
という理屈です。

 夏に温度を低めに設定して、ドライモードにすることが多く、冷房とドライの区別がつきにくいのですが、本来は暖かい温度設定でドライ、というのも可能です。
ただし、その場合は後で空気を暖める分だけ消費電力がかさみます。

  余談ですが、コンプレッサーに取付ける「冷凍式エアドライヤー」も、この原理を応用している機器です。

■人の体感
 私たちは室温が同じでも、湿度が15%下がると、1℃低く感じます。再熱方式のドライモードでも、設定温度を2℃上げて使用すると、約10%の省エネになります。一般に高級機種には再熱方式が採用されていますが、再熱方式のドライモードを効率的に使うには、設定温度を上げる工夫がポイントです。この理由により温度設定機能が付けられています。

 

 

参考データ:気象庁HPより  
下記データは京都市内で観測された、或る1日の気温と湿度の移り変わりです。
【データを見て気付いたこと】
湿度
 1日のうちで、気温の変化は体感として判りやすいですが、湿度も1日のうちの時間経過で、大きく変化していることがわかります。大まな湿度の傾向は、日中は低く、夜は高い。日の出とともに湿度が下がりはじめ、日没とともに湿度は上昇し、これを繰り返します。したがって、塗装作業をする時間帯(おおよそ午前8:00〜午後7:00)は、1日のうちでも比較的湿度が低いときです。
■春は日中、気温は適温ですが、意外にも湿度が低い。夏は高温で多湿。秋は日中、湿度が高い。冬の低温、低湿度。
■気温と湿度はその日の天候により大きく左右されます。
■日本列島は縦長のため、同日でも地点により気温、湿度は大きく異なります。

*なお、日本各地の過去の気象デ−タは コチラ → 気象庁 いろいろなデータが調べられます。

 
時刻 春 2011年4月1日 夏 2010年7月16日 秋 2010年10月23日 冬 2011年1月30日
気温(℃)  湿度(%)  気温(℃)  湿度(%)  気温(℃)  湿度(%)  気温(℃)  湿度(%) 
(AM)1 5.9 62 24.4 87 16.5 79 -0.4 44
2 5.7 67 24.3 87 16.1 80 -0.6 46
3 4.4 64 24.3 87 15.8 82 -1.1 50
4 4.3 64 24.3 88 15.2 84 -1.7 52
5 3.9 69 23.9 88 15.2 86 -2 54
6 3.6 69 24.6 87 15.2 84 -2.3 57
7 4.6 65 25.4 83 15.4 83 -2.7 60
8 7.3 55 26.9 74 16.5 79 -2 56
9 10.1 43 27.9 71 18.3 73 -1 52
10 12.8 33 28.9 68 19.6 67 -0.2 47
11 15.2 25 29.5 63 21.8 53 2.2 40
(PM)12 17 17 31.4 53 22.4 55 3.2 39
13 17.7 15 31.4 50 22.7 53 3.7 35
14 19.2 16 32.9 46 24.3 48 3.2 35
15 19.5 15 33.4 49 23.7 49 3.6 30
16 19.4 13 28.6 57 22.7 52 3.2 28
17 18.6 13 26.1 75 21.8 58 2.4 32
18 17.3 16 25.9 74 20.8 61 2.1 36
19 16 27 26 72 20 65 1.1 42
20 14.3 33 25.7 75 19.4 66 0.6 40
21 12.4 41 25.1 75 18.9 68 0 39
22 11.6 49 25.1 77 18.4 65 -0.6 41
23 11.1 58 25.1 76 18.2 62 -1.2 44
24 10.6 65 24.9 78 17.4 68 -1.7 47
 
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