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画期的な水性塗装用ブースCAB-H2が発表されました。このブースを開発したメーカーは、日本のブーストップメーカーであるアンデックス。 このCAB-H2の概要をお伝えする前に、「オートリペア業界の水性塗料化の現状」はどうなっているかという話をします。
「地球環境」というテーマを掲げ、トヨタをはじめとした日本のカーメーカーは、新車塗装ラインにおいては、かなり水性塗料化が進んでいます。しかし、「補修塗装の水性化」は、まだまだ遅れているのが現状。
内製化工場やボディーショップ経営者がいきおい、なかばトップダウンで水性塗料を導入してはみたものの、現場では生産性が低下して、もはや、あきらめムード。もとの溶剤系塗料に戻す、といったケースも少なくありません。
ではその原因を探っていくと、意外なことが解ってきた。
■ヨーロッパではどうなってるの?
ヨーロッパでは世界に先駆けて、2007年より法規制で、すでに水性塗料以外は使えなくなったことは、みなさんご承知のとおり。それでは、ヨーロッパで、実際、水性塗料はどのように使われているのだろうか?というと、水性塗料を使う上で、以下の2つの問題が思い浮かんだ。
@乾燥性による生産効率の低下
A塗装品質
まず@だが、ヨーロッパの現場で使用されている乾燥機器は、A.エアブローガン B.エア噴射口の付いた塗装ブースを使用する。
A.のエアーブローガンは機器メーカーから簡単に手に入る。(このような機器です。▲コチラをごらんください。)
B.は、例えばSAICOというブースメーカーから水性塗装ブースとして発売されているので、▲コチラをごらんください。噴射エアの供給源は大馬力のコンプレッサーです。
さて、実際にBの噴射装置付ブースで、塗装の乾燥を行った場合にどうなるか・・・。結果として、ホコリが多い塗装の仕上がり状態になってしまいます。これは日本市場での塗装品質を考えた場合、カーオーナーの納得は得られないでしょう。欧州ではそれでもOKなのかもしれないのですが、これは国民性の違いなのでしょうか。さらに、日本ではボディーショップの現場へいくと「塗装の塗り肌がいい」というような表現をしますが、他の国、特に欧米諸国ではそのような評価はしないようです。日本は世界の国々の中でも、もっとも塗装品質の要求が高いと言われています。
■湿度の管理
塗料メーカーの水性塗料の説明を聞くと、水性塗料の乾燥には湿度の条件が密接に関係があると言います。でも、ちょっと待てよ?それではヨーロッパの現場では湿度は管理しているのかな?という疑問が浮かびます。なぜなら、湿度を調整できる塗装ブースは見たことがない。せいぜいやっているとしても、温度を少し上げてやると、湿度が若干下がる。というレベル。ヨーロッパは日本と違って、元来、湿度が低いためか、そこまで湿度を制御するという考え方はない、というのが真相のようです。
前置きが長くなりました。では、今回アンデックスから発売された、水性対応ブースとはどのようなものかをご説明します。
■本題 CAB-H2の性能・・・ 温度、湿度を一元管理できるブース
今回、発表されたCAB-H2は、ズバリ塗装ブースの機能として、温度はもちろん、湿度までも管理してしまおう、という発想から生まれたものです。従来、湿度を設定(除湿&加湿)できる塗装ブースは存在しなかったので、その意味ではCAB-H2は画期的なブースだと言えます。
湿度を管理するとは、具体的には、「除湿」と「加湿」、両方の機能が必要になります。
・除湿
実験の結果、水性塗料の塗装に最適な条件は、各塗料メーカーにより、若干の差はありますが、おおよそ温度25℃、湿度35%前後だということが、解ってきました。特に乾燥性は、通常、最適条件では指触乾燥が1分40秒〜2分であるのに対して、湿度が80%の場合2倍〜4倍以上時間がかかります。(4分〜8分) 各コート間はこれだけのインターバルを要するため、3回塗りの場合は×3で、これだけで12分〜24分かかる計算になり、生産性に大きく関わる要因となります。生産性を落とさないためには、除湿機能が不可欠となります。
水性対応のCAB-H2の開発にあたり、コストとの戦いという新たな問題点が浮上してきましたが、これもアンデックスの技術力によって、みごとにクリアされています。この点については、のちほど「水平流のわけ」で出てきます。
従来の上下式圧送ブースに、湿度管理機能を付加した場合、ひじょうに高額なものになってしまいます。除湿とは、ルームエアコンでいうとクーラー機能の部分です。アンデックスの製品で言うとCAB-07やタイプ10に、仮に除湿機能を取り付けるとするならば、計算上52KW冷媒機×3機以上が必要になります。その能力により価格の違いはありますが、仮に1機が約800万円とするなら、冷媒機だけで○千万円という高額な投資になるため、実用的とは言えません。除湿に関わる費用がこのような金額になるとは、想像しがたいですが、工場用の冷房機を思い浮かべれば、イメージしやすいでしょう。さらに、屋外には巨大な室外機があります。広い工場ならば、これが何機も装備されています。
塗装ブースの室内は、工場よりも狭いスペースなのに、どうしてブースにはこのように大きな"冷媒"が要るのか?
塗装ブースの場合、常に室内を換気するためには、空気を室外に排気しなければなりません。つまり、冷やした(除湿)した空気を作り出しては、常時ブース外に捨てていくことになるために、とても大きな容量の冷媒機が必要なのです。
・加湿
水性塗料に、加湿はどうして必要なのか?
さきほど、水性塗料の最適塗装条件として、湿度35%と書きましたが、例えば、湿度が10%以下の条件で塗装した場合、水性塗料の乾燥は、かなり速くなります。速く乾燥すれば、いいように思いますが、実際は塗装面のレベリングが悪くなるため、塗装不良率は高くなります。したがって、湿度が極端に低い場合は、加湿も必要になります。
溶剤型塗料の場合、季節(気温)にあった希釈剤(シンナー)の選択により、乾燥スピードを調整することができますが、水性塗料の希釈は水(一定)であるため、乾燥スピードを調整することができません。
したがって、塗装ブースというインフラが整備されない限り、「水性塗料は現場では、うまくいかない」という結果に陥ります。
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CAB-H2 |
CAB-10 |
| 方式/風の流れ: |
水平流 圧送式 |
上下流 圧送式 |
| 給、排気ファンモーター/kw: |
各3.7kw(5馬力) |
各7.5kw(10馬力) |
| バーナー熱量/kcal: |
240,000kcal |
80,000kcal |
| 必要風量/毎分: |
165m3/min. |
444m3/min. |
| ブース内風速m/秒: |
0.2m/sec. |
0.2m/sec. |
| 風方向断面積: |
10.8u |
30.1u |
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気流テストのもよう |
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マイコンインバーター制御盤 |
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ターボスイッチ(風力アップモード) |
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水性塗料の塗装テスト |
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シッケンズオートウェーブのシルバーMをテスト吹き |
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水平流による背面フィルター |
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バッフル型排気フィルターの表面 |
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ブース内部を外から見られるサイド・ウィンドウ |
■水平流のわけ
今回、CAB-H2は水平流という風の流れの方式を採用していますが、どうしてなのでしょうか?
CAB-H2はサイズ的に言って、同社の上下式CABタイプ10とほぼ同じ寸法です。給気、排気ファンモーターの容量は、タイプ10が各々7.5kwなのに対して、H2は各々3.7kwと、1/2になっています。また、バーナーの熱量は、タイプ10が240,000kcal/hなのに対して、H2は80,000kcal/と、1/3になっており、電気、ガス(灯油)とも省エネルギー化が画られ、大幅にランニングコストが低減されます。
今回H2の給排気ファンモーターをあえて小さくした理由は、ブースの風量と除湿するため冷媒機の能力の大きさに密接に関わってきます。ブース内空気の流れを水平流にすることによって、少ない風量で、安全衛生基準値である風速0.2m/秒以上をも満たせること。
もうひとつの最大の理由は、風量を少なくすることによって、比較的小さな能力の冷媒機で除湿できることです。さきほど述べましたが、上下流では多量の風量(別表参照.444m3)が必要となり、その大容量の空気を除湿するには、大きな出費になると説明しましたが、水平流ならば風量はその1/3以下であり、冷媒のコストを低く抑えらることが、最大のメリットです。これにより、ハイテクの湿度管理型水性塗装用ブースが、現実的な価格で導入できるようになりました。これが今回のH2が水平流を採用した理由です。
上下流(タイプ10)の場合の断面積とは、ブース室内の床面積と考えれば解りやすい。水平流(H2)の場合の断面積とは、ブース入口(ブース室内高×幅)の面積、つまりドアの開口面積です。ブース内風速は、0.2m/秒以上という、労働安全衛生基準を満たすに必要な、風量計算をして、ファンモーター出力が設定されました。
■風速アップモード
塗装設備の安全衛生基準値である、室内風速0.2m/sec.以上を、クリアしているのはもちろんですが、水性塗料の乾燥では、エアブローガンを使うことは、ご承知のとおりです。さらに、乾燥を速めるには、ブース自体の「風=空気の流れ」を利用します。CAB-H2には、風速アップモードが装備されていて、塗装時には0.2m/sec.で運転し、乾燥時にはブース内に装備した「ターボスイッチ」を押すと、風速0.4m/sec.に瞬時に切り替えることができます。(ワンタッチでON.OFF) オプション設定ですが、水性塗装には欠かせない機能なので、ぜひともお選びください。
■内圧制御
アンデックスのすべてのCABプッシュプル型ブースには、従来から内圧自動制御という機能が、装備されています。CAB-H2にも当然のように、この内圧制御機能は付いています。アンデックスではあたりまえの機能なのですが、意外にも日本の他社あるいは、世界を見渡しても、この内圧自動制御を備えたブースはありません。
また、CAB-H2は、制御システムも、徹底的に省エネルギーにこだわった設計になっています。効率よくエネルギーを使うために、動力ユニットをすべてインバータ制御にしている。インバータを標準装備することで、ランニングコストを抑えながら、ブース内のエア・コンディションを最高の状態に保ちます。
■ノーピット
CAB-H2には水平流構造によりピットはありません。
従来、塗装ブースの概念では、上下流が良いされていましたが、CAB-H2はその常識を打ち破りました。
ノーピットの利点は、まず、ピットにかかる費用がかからないこと。ほか、「ピット工事」がないため、設置工期が短縮できる。
■塗料メーカー・デモの意見
今回、外資系塗料メーカーであるアクゾノーベルの協力を得て、水性塗料の塗装実車テストを行いました。デモンストレーターにCAB-H2について尋ねたところ、次のような回答を得ました。
・ゴミ、ブツの付着は少ない。上下圧送式と比べても遜色はない。
・水平流でもまったく違和感なく塗装できる。スプレーミストが水平流で持っていかれるということはなかった。
・温度、湿度が自由に設定できるため、水性塗料に最適の条件を作り出せる。溶剤型塗料と変わらないフィーリングで塗装できる。
・ワンタッチターボモードがあるので、水性の乾燥には有利
・水性塗料には厳しい条件であるが、あえて湿度80%に設定して塗装をしてみたが、以前の当社の実験データでは指触乾燥8分であったが、今回の実験では4分という結果であった。これはターボモードを使用することによって、半分に短縮されたのかな・・。
■室内の照明
CAB-H2には天井に給気フィルターはない。天井には40W×4灯の照明ユニットが2列配列されいる。真上からの照明により、影ができることなく塗装には最適の照明条件ができた。また、両側面にも上下2段の照明が装備されているため、ブース室内はとても明るい。
■総評
私は今回はじめて、CAB-H2にお目にかかりました。まず、驚かされたのは、前面ドアのデザイン。まるで、銀行の地下に設けられた、大金庫室の入口のような印象です。H型でその厚みは40cmはあるかと思われます。前面には軽々しいフィルターの露出はなく、クローズドで重厚感のあるデザインに仕上がっている。しかし、その挙動は驚くほど軽い。
ドアの内側には一面、給気フィルターが張り巡らされていて、上部には給気口が2連ついている。給気はブース後方より、天井裏に仕組まれたダクトを通って、このドア給気口に連なり、給気フィルターでろ過されてブース室内へと入る。よくも、こんな構造考えついたな・・・と感心させられる。
後壁面にはこれも、全面にバッフル型・フィルターが張り巡らされている。バッフル型とは、ペーパークラフト系フィルターの一種で、山谷に折られた厚紙に、φ10mm程度の気孔が無数に開いているもの。水性塗料のミストは、フィルターの目詰まりが早いので、フィルターのライフサイクルを延ばす目的で採用された。その後ろには、不織布の2次フィルターが控え、ミストを屋外へ逃がさない。
メーカーではオプションで、両側面にのぞき窓を付けることができるとしている。いちはやく、CAB-H2を導入し、水性化した企業へは、おそらく多くの人々が見学に訪れるだろう。近年、「環境」に取り組む姿勢が、企業に問われる時代になってきましたが、環境社会にたいするアピールとして、この「のぞき窓」はあるのだろう。CAB-H2の出現により、これから水性塗料の普及に拍車がかかると予想される。
H2は水平流にすることによって、省エネルギー、かつ低コストを実現し、実用としては世界で始めて、水性塗料対応ブースが完成したわけです。
CAB-H2はただ単に塗装設備というよりは、空気のコンディションを最高の状態に整える、まさに、「空調型塗装設備」と呼ぶにふさわしいものです。
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CAB-H2の外寸法図面 |
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CAB-H2はボディーショップ経営者から
とても高く評価されました。 |
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■後記
さて、昨今、金融危機での業績悪化が、企業を追いこんでいます。「マズローの欲求の5段階」でいえば、企業経営者の、環境にたいするモチベーションは、2段階ほど下がったのではないかとさえ感じます。つまり、「地球環境」よりもまずは「今、自分たちは、どうして生きていくのか」 というほうが先決問題・・・の感があり、水性塗料化は「一旦保留」としているようです。
その一方で、今回このCAB-H2のプレゼンに、お付き合いいただきました、ボディーショップ経営者の方々からは、「これでようやく、水性塗料導入へのメドが立った。」と、高い評価をいただき、環境への取組みに意欲的な姿勢を見せておられました。
話は替わりますが、先日、玄人本舗にわざわざ、アフリカのタンザニアから通訳を伴って、お客さまがお見えになって、弊社で販売しているスプレーガンを、買って帰られました。おかげさまで、弊社の在庫は、すっかりなくなってしまいました。そのお客さまがおっしゃるには、今日は "made in Japan" を買いに来たと・・・。タンザニアでは "made in Japan" はとても評価が高く、日本製を使っているというだけで、自社の技術を誇れるのだ・・・。と言っておられました。
日本にどっぷり浸かっていれば判らないことですが、世界の中でも日本の技術力は、私が想像していた以上に、とても評価が高いようです。「日本もまだまだ、捨てたもんじゃない。」とあらためて感じました。
今回、開発されたアンデックスCAB-H2を見て、「日本のものづくり」の底力を見たような気がします。そこにはまちがいなく、「世界に誇れる確かな技術」 があります。
がんばれニッポン!!
【2009.3.7 ken】
玄人本舗ではCAB-H2の販売を開始しました。ご遠慮なく弊社までお問い合わせください。
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