自動車用塗料の歴史 
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■自動車塗装の歴史と塗料の変遷

 ある雑誌で自動車の塗装と塗料について書かれた記事を読みました。自動車塗装の歴史については、私もまだ生まれてはいない時代であり、その内容についてはこういった文献を参考にするしかありません。また、そのほか塗料の組成などについては、私の考えを入れて少し筆を加えました。塗料と自動車塗装の歴史がよく解ります。

 塗料の中味を大きく分けると、樹脂といわれる粘着性液状の物質と、顔料つまり色を与える成分とで出来ている。樹脂は乾燥して硬い塗膜を形成するのだが、塗料はこの樹脂の種類によってエナメル・ラッカー・ウレタン等の種類に分類されるのだ。

 初期の塗料は亜麻仁油と松ヤニ(ロージン)を混ぜたもの、いわゆるワニスに顔料を加えた色付きワニス、つまりエナメル塗料であった。 ワニスやエナメルの希釈にはテレピン油が使われる。テレピン油は松の樹液を煮ることにより出る気体を集めて冷やしたものである。
 初期のエナメルは乾燥がひじょうに遅く、3ヶ月もかかったと言われている。しかし、なぜか顔料にカーボンを使用したいわゆるブラックだけは比較的乾燥が速かったらしく、これがT型フォードなどでブラックが塗装される理由になったようだ。それでも乾燥には3日かかったという。しかも寿命は3年と短く、今では考えられないような話だ。

 1915年頃 合成ロージンが造られるようになり、分類上レジンと命名される。このレジンを乾燥させるのに高温で焼く必要があったが、約1時間で乾燥した。
 1923年頃まではブラックの焼付けエナメルだけが生産されたという。

 当初、爆弾の製造メーカーだったE.I.デュポン.ド.ネムアズが1922年に新しい塗料の開発に成功した。これが現在の塗料メーカーのデュポンである。
この塗料はエナメルのように、空気中の酸素と結合して、長い年月をかけて硬化していく、いわゆる酸化重合型という乾燥形態ではなく、揮発性溶媒を急激に揮発させることにより、ニトロセルロースの硬い塗膜を形成する。デュポンではこの塗料をデューコと名付けたが、ポリッシュ後のツヤ加減が東洋で作られた家具独特のツヤをラッカーと呼んでいたため、この名称がついた。

 余談だか、私がまだ駆け出しのころ、塗料を扱っていた父親から「デューコ」という呼び名を聞いたことがある。そのころの自分の認識では、デューコとデュポンは同意のようにとらえていたが、この説明でよく理解できた。

 ラッカーの登場で、高温での乾燥が不要になり、様々な色の顔料が制約なく使えるようになって、多様な色彩が可能になった。 しかし、このラッカーという塗料は、溶剤が揮発したあと、ツヤが若干引くのである。これは物理的に仕方がないことで、現在の製品も同じようにツヤ引けが起こる。
 たいしてエナメルは伸びが良く、ポリッシュせずとも充分な艶が出ていたため、ラッカー塗料は欠陥塗料扱いされるのを恐れて、ツヤ消し仕上げに指定されていたという。

  ラッカー塗料を初めて量産車に使用したメーカーがGMであり、ボディーは中級車の1924年型オークランド、のちにポンティアックに引き継がれるボディーである。 なぜか当初ボディーカラーはトゥルーブルーという名前のブルーのみの設定であった。 
 翌年にはGM全車がラッカー塗装に変更され、大手メーカーのクライスラー、フランクリン、チャンドラー、ナッシュ、マーモン、キッセル、マックスウェル、ハップモビル、アメリカンロールスロイスまでもラッカーを使用するようになった。

 1926年には、ほとんどのメーカーが、ラッカー塗装にポリッシュ仕上げをするようになる。シボレーもこの年からラッカー塗装を採用し、1927、1928年には販売台数でフォードを抜く。

 1927年、上級車だけでなく、フォードなどの低廉な普通車にまで、色とりどりのラッカー塗装が施されるようになる。

 1928年、GMがデュポンの株を39%も所有していたことに苦慮していた社長ヘンリー・フォードだが、ついにFORD全車にラッカー塗装を採用。

 ここでラッカーに変更したがための問題点に触れておくと、エナメルは塗膜がとても厚く、少々の傷なら埋めて隠せてしまうのだが、ラッカーは何度塗り重ねをしても、傷が表面に浮かび上がってしまう。生産ラインでは、大勢の下地処理職人が必要になり、塗装後のポリッシュも手間が必要になった。そしてフォードにとって、GMの支配下にあるデュポンのラッカー塗料を使うのが面白くないのも、大きな問題であった。 
 1938年、フォードとクライスラーは、大豆油と合成レジンを原料とする、新しいエナメル塗料「合成エナメル」を採用する。
この時期を境に、GMはラッカー、フォードとクライスラーはエナメルを使用するのが定番となった。
 1955〜1957年、フォードは、アルキッド樹脂エナメル塗料に転換する。これはアルキッド合成樹脂にココナッツオイルを合成したもので、割れにくく丈夫な塗膜を形成した。

  同時期、GMはアクリル樹脂ベースのアクリルラッカーへと移行する。
アクリル樹脂は透明度が高く、熱に強く、黄変(経時変化で黄色くなる)も少ない。仕上がりのよさから、以後、塗料の開発にはアクリルエナメル、アクリルラッカー、アクリルウレタンなど様々な塗料に使用されてきた。
1960年代後半、新車ラインではアクリル系およびソリッドではメラミンの焼付塗装が主となり、高温、短時間で焼付ける乾燥形態をとるようになり、再塗装用は常乾型に近い比較的低温で乾燥する塗料を使用するという考え方があらわれ、このころから塗料は用途別に分岐していく。

1970年代になると、2液エナメル、エポキシ、ポリウレタンなどの2液混合タイプの塗料が開発される。 そのうち、2液エナメルが触媒によって酸化重合速度を速めるのに対し、エポキシやポリウレタンは2液を反応させることで固い塗膜を形成する。つまり、今までの塗料とは全く異なるタイプなのだ。特にウレタンの場合、60〜80℃という比較的低温で30分程度焼くと、ポリッシュも可能なほど速い。
現在でも、ソリッドカラー(メタリックやパールを含まない色)はこのウレタンが使われることが多い。

近年、主流になっているのは、2コートシステムと呼ばれるもので、乾燥の速いカラーベースの上にクリアーコートして仕上げるタイプである。ベースコートには塗料と硬化剤を混合し、シンナーで希釈するいわゆる2液タイプと、塗料をシンナーで希釈するだけの1液タイプがある。

  従来のウレタン塗料でメタリックやパールを塗装する時、普通にクリアーを塗るとクリアー中の溶剤がカラーベースを侵し、メタリックやパールがクリアー中に溶け出して浮遊するという「戻りムラ」が発生していた。これを防ぐ為に 2コートシステムでは、ベースとクリアーの塗料の成分を変えて、お互いが混ざりにくくすることで「戻りムラ」を防ぐという効果がある。このシステムはヨーロッパでは2Kタイプと呼んでいるが、2Kの語源は諸説あるが、2-Komponent(ドイツ語)、つまり2つの異なった物質(樹脂)を塗る、という説が有力である。

 ここ数年、地球環境問題から水性塗料が登場した。ヨーロッパでは2007年1月、法の施行により、ベースコートは水性に全面的に置き換わった。日本でもトヨタが水性塗料の使用を積極的に推進している。新車ラインでは、すでに世界のカーメーカーで水性塗料が使われている。

 

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